『もっと早くにやめておけばよかった』
 脳裏に言葉が蘇る。
『後悔はいつだって取り返しがつかない』
 天へと一本の煙が昇る。
『これが身から出た錆だ、実に良い見本だだろう』
 くすんだ赤が悲しく明滅している。
『こうはなりたくないだろ』
 星だけが煌めく視界が煙で滲む。
「今日、あなたの孫が産まれました」
 右手のZippoに見慣れた、そして懐かしい顔が見えた。
「あなたのようになれるだろうか」
 この日を境に夜の蛍は姿を消した。

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