2024-08

雑記

寛容と感謝への回帰 ― 現代社会における精神性の再考

受け入れ、赦す。 それが愛だとレ・ミゼラブルには書かれており、キリスト教の教えとはそう云うものだと思っている。 どうだろうか、現代において人類はそのことを忘れてしまっているのではないだろうか。 イスラム教の偶像崇拝禁止も、全人類の心にはそれ...
二百文字作文

翼なき自由への憧憬

ここはまるで砂漠だ。 もう何年こんな生活をしているのだろう。 友達も過去にはいたが、皆あの人に取り上げられた。 僕にあるのは、この黒くて大きな四本脚だけ。 お前のことは嫌いだ。だけどお前が歌っている間だけ、僕は自由でどこまでも飛んで行けた。...
作文練習

蜂蜜色の約束

白い紙飛行機が上昇気流に運ばれながら、雲ひとつない青空に螺旋を描いて昇っていく。 小さな校庭では子供達が空に向かって手を振って大声を出していたり、望遠鏡を覗いたりしているのがよく見える。 一人の男がそんな様子を眺めながら、愉快そうに語りかけ...
二百文字作文

煮干しを解く

わたしはコンセントに繋いだタブレットで動画を見ながら、もう三十分ほど煮干しと格闘している。 お母さんはこんなことを毎晩していたのか。 労いと感謝の混ざった溜息に、一輪挿しのタンポポが小瓶のフチで小さく揺れた。 こんなこと毎日やってられないよ...
作文練習

夜明けのプレリュード

始発のチャイムが鳴り、圧縮された空気が扉を閉めると、ゆっくりと車体は動き出した。車窓に映る町並みは、まだ微睡みの中にあるようで、早朝と言うには暗々としていた。 車内と腰掛けたシートはとても暖かく、レールの継ぎ目はまるで子守歌だ。気を抜けば終...
作文練習

境界線の向こう側

カチッカチッと最後の抵抗をしてた海岸灯が力尽きて消えた。「……そろそろか」 男は腕時計を見やると、こぶし大の蛤をおもむろに取り出して海へと投げ込んだ。 ドッポン。 蛤の落ちる大きな音は波紋となり、その姿と共に黒い海の底へと消えていった。 黒...
二百文字作文

静寂の中の発見-美術室のソクラテス

美術室からは不規則なリズムの音色が聞こえてくる。中を覗いてみると、どうやら中には学生が一人いるようだ。 シャッシャッシャ、サー、ササッ。 強弱を付けた黒い線たちがキャンバスで踊る。 学生は睨み付けるようにモチーフを一瞥すると、再びキャンバス...
二百文字作文

時を超える鐘の音

冷えた黒い夜空には無数の光が瞬いている。 コートを着た男性がひとり、静かに空を仰ぎたたずんでいた。 時計塔の鐘の音が過去を送るように鳴っている。「眠るお前はこんな夜空をしていたよ」 艶々な漆黒の毛並みに満月のような瞳。男性はいまでも鮮明に思...
ショートショート

空に泳ぐ

少女は雨が降るのが楽しみだった。 来る日も来る日も彼女はお母さんに聞いた。「きょうは、あめ、ふるかなあ」 今日の天気も終日晴れ。そこでお母さんは人差し指を顎に当てて考えた。そして少女に言った。「雨、降らしちゃおうか」 少女は目を輝かせると大...