空に泳ぐ

 少女は雨が降るのが楽しみだった。
 来る日も来る日も彼女はお母さんに聞いた。
「きょうは、あめ、ふるかなあ」
 今日の天気も終日晴れ。そこでお母さんは人差し指を顎に当てて考えた。そして少女に言った。
「雨、降らしちゃおうか」
 少女は目を輝かせると大きく何度も頷いた。

 合羽と長靴、そしてお気に入りの傘を携えて、少女は小さな庭へとやってきた。
 手入れの行き届いたその庭は、ランタンのバス停で動物の置物達がバスの形の鉢植えを待っていた。バスにはすでに、一頭の蝶が羽を休めるために乗っていた。
 蝶々を見つけた少女は、なんだか嬉しくなってその場でぴょんぴょん跳びはねた。すると蝶々は空色の羽を、はたはたと動かして飛び立ってしまった。
「ちょうちょさん、またね」
 そう言うと、背後からお母さんの声が聞こえてきた。
「さあ、お嬢さん。準備は良いかな」
 お母さんはそう言うと、片手にホースシャワーを持ってにやりと笑った。すると少女は「ちょっとまって」と笑顔で答えると、その手に持った傘を大事そうに開いたのだ。
 傘から青い影が少女に降りる。少女は顔を上げると、まるで空を泳いでいるようなジンベイザメとコバンザメの姿があったのだ。
 お母さんは準備の整った少女を確認すると、ホースから雨を降らせた。
 ザザッザザッと傘が水をはじく。そのたび少女の笑い声が小さな庭に響き渡り、喜びの虹が架かっていた。

「そろそろ雨が上がる時間だよ」
 お母さんがそう言うと、「まだあがりませんよお」と傘をクルクルと回して見せて少女はいったのを見て、「そっかあ、それならおやつはお預けだ」とお母さんはおどけてみせた。
 すると、ハッとした少女は元気よくこう言ったのだ。
「あめ、あがりましたあ」
 この言葉を聞いたお母さんは頷くと、シャワーを止めて言った。
「それでは、傘を乾してお家に入りましょう」
「はあい」
 少女は開いた傘をそのままお母さんに渡すと、急いでおやつのもとへと駆けだしたのだった。
 お母さん受け取った傘を柵に掛けると、「まったく」と独りごちると少女を追って玄関を閉めた。

 爽やかな風に吹かれて揺れる傘に、空色の蝶々が止まっていた。 

 AIからのお題「雨傘、蝶、駅」
 AI校正は一度。
 

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