二百文字作文

反射

ラベンダーの香りが彼の鼻を掠めた。「香水?」 そう言って周囲を見回しながら首を傾げた。いつもの整理整頓された自室には、もちろん一人しかいなかった。――気にしすぎか―― 新宿駅で見たその姿が脳裏に蘇る。――背後を映した車窓からこちらを見ていた...
二百文字作文

シナモンを添えて

「この香り、凄く好きかも」 彼女はそう言うと目を閉じて再び香気を堪能しはじめた。甘く爽やかなその香りは優しく車内を包んでいる。「あなたのためにドリップした甲斐があったわけだ」 ハンドルを握る彼は軽く目を細めて笑ってみせると、「一口ちょうだい...
二百文字作文

百薬の長

「慣れたらこっちの方がいいな」 彼は手に持ったものを飲み干すて続けて独りごちた。「きっと刺激が欲しかっただけなんだろうな」 先月までの全身を纏う臭気は薄くなり、顔は少し細くなったように見える。何より前頭葉に掛かっていた霧が晴れていく感覚と比...
二百文字作文

天国

その洋食屋は商店街の角にある。 四人掛けのテーブル席が二つと、くの字型のカウンター席が八つ。カウンターからは厨房がよく見える造りになっている。 名物は山なりのチキンライスの上に半熟のオムレツを頂くオムライスで、オムレツには六文銭の焼き印が押...
雑記

過去という道標

二〇二二年に書いていた日記を少し読み返してみた。 中身はそうそう変わるものではないようだ。 日記を付けだして一週間目には、「ものぐさな自分がよく続けられている」と書いてあるあたり自分のことをよく解っている。 しばらくは毎日のように何かしら書...
読書感想文

ありがとう

今でも自分が死んだら葬式はしなくて良いと思っている。自分自身には必要のないことだからだ。それに折角死んだなら人間の輪から外れて自然の一部になりたいとも想っている。だから火葬ではなくそのへんの山に風葬してもらえたらどんなに嬉しいかわからない。...
雑記

決意表明のようなもの

過去にアフィリエイトでお金を稼げたらなんていう甘い考えてブログを立ち上げたこともあった。だがしかしものの数日でやめてしまった。 日記は付け続ければ何かが変わるかもしれない。と思って一年間書き続けたけど特に何も変わることはなかった。 お金のた...